<東日本大震災>医者いない町巡回 薬剤師、妻と奮闘
毎日新聞 3月15日(火)21時52分配信
| 被災者のお年寄りと話す大坂敏夫さん=岩手県陸前高田市気仙町で2011年3月15日午前7時56分、稲垣衆史撮影 |
【東日本大震災最新情報】
壊滅的な被害を受けた岩手県陸前高田市。宮城県と接する気仙町では市の中心部とつながる三つの橋が流され、避難所への医療スタッフの巡回が迂回(うかい)ルートを通らざるを得ず、普段より1時間ほど多くかかっている。そこで、地元で被災した薬剤師、大坂敏夫さん(46)が立ち上がった。不眠不休で町内10カ所の避難所を走り回り、妻の光恵さん(46)も看護師の資格を武器に後押ししている。
「この薬は手に入ると思うから安心してね」。大坂さんが薬手帳をもとに必要な薬を割り出し、燃料不足で病院に行けない住民に代わって車を運転。薬を避難所に持ち帰る。顔見知りだから、住民たちも安心だ。
勤務中に被災した大坂さんは、近くの県立病院の屋上に避難して一命を取り留めたが、自宅は流されて親戚宅に身を寄せる暮らしが始まった。だが、何より気がかりだったのは、地域のお年寄りたちだった。「医者がいない町で薬も流されて不安だろう」。家族の安否を確認する前の13日夕方から巡回を始めている。
自家用車は震災で流されたため、被災者から借り受ける。燃料は住民たちがそれぞれの車に残ったものを持ち寄ってくれる。1日に応対する住民は200人を超え、早朝から深夜まで走り回る日々が当分続きそうだが、「声をかけるだけで安心するでしょう」と笑顔を見せる。
光恵さんも、6歳の一人息子の世話を親戚に任せ、避難所で体調を崩した住民たちの相談に乗っている。「旦那の背中を見て一緒に頑張ろうと思った」と力を込める。住民の伊藤マサ子さん(74)は「薬は流されたけど、安心しました」と表情を緩ませた。
だが、2人の疲労はピークに達しつつある。被災の恐怖を体験し、避難してからもほとんど寝ていない状態だ。
「いつまで体が続くか。一日も早くお医者さんに診てもらえる日がくれば」と望んでいる。

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